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留学プログラム

交換留学

浙江大学(中国)

  • 留学期間:2017年9月~2018年7月
  • 学部等:人文社会科学部

「中国」と聞いたとき、日本人が抱くイメージはあまり良くないことが多いでしょう。私自身留学に来る前は良い印象は持っていませんでした。日本で報道されるのは大気汚染や事故、政治上の問題、衛生面の問題など中国に対する知識が偏るのも無理はありません。欧米に留学に行くと言えば明るく華やかなイメージがもたれ、羨ましがられることもあるでしょう。それでも中国を留学先として選んだのは、中国語をきちんとマスターしたいという思いがあったからです。

中国での留学

・授業面
浙江大学は中国で五本の指に入る名門校で、一般の中国人学生が入学するには超難関といわれています。そのため真面目な学生が多く彼らとの交流は非常に有意義なものになるでしょう。
留学生に関しては一般の学生とは違い留学生同士で中国語を学ぶことになるので、普段は中国人ではなく外国人同士で生活することになります。中国人の友人を作るには自分から積極的に機会を作らないといけません。私はよく日本語学科の学生の方と遊んだり、相互学習をしたりすることが多いです。自ら動くことができればネイティヴの友人を作るのは難しいことではないと思います。
普段の授業では中国語の文法・読解・聴力・会話の四つの面から学びます。クラスは各自のレベルによって分けられ、私は最初3.5班、最高が6班なのでほぼ真ん中の班になりました。クラスメイトはまさに多種多様な人種からなり、日本人のなじみの少ない国、例えばカザフスタンやモロッコからの学生もいました。寮にはアフリカ系、アラブ系、北欧の学生なども多く、静岡大学とは違うグローバルな環境に身を置くことができます。授業は中国語で行われ(初級の1,2班は英語)初めの頃は聞き取れないことも多く焦っていましたが、一、二ヶ月ほどで慣れました。またアジア圏の学生は普段中国語で話すことが多く、ヨーロッパ圏の学生は英語で話すことが多いので、英語の使用頻度も非常に高いと言えます。また韓国人留学生の数も多いので韓国語もよく耳にします。授業の難易度はそれぞれのレベルにあったクラスなのできちんと出席し予習復習を行えば特に困ることはないです。ただ授業は日本と同じで基本的に聞く、読むことが多いので、もちろん語学力は伸びますが、授業外で実際に中国語を話さないければ口語の伸びしろは大きくないです。
クラスの雰囲気も、全員が真面目というわけではなく全然出席せず遊んでいる人や遅刻ばかりの人も当然いますし、私のクラスは非常に静かで担任の先生が主催する遠足などの活動もなく、クラスメイト全員で食事会をしようとしても全員がそろったことはなかったです。このような雰囲気の中で自分がどう過ごすのか、どんな人と付き合っていくのかを考えて行動する必要があると思いました。
また選択科目を履修することもできます。これは必須ではないので取らなくてもいいのですが、私は興味のあった「中国茶文化」、「中国結び」、「中国古典」の3つの授業を取りました。どれも中国語で学ぶので難しかったですが、内容は充実していて面白かったです。日本は基本緑茶を飲みますが、中国では地域ごとに様々な種類のお茶があったり、茶器、作法も全く異っています。この授業は浙江大学のお茶研究室で研究をしている中国人学生さんが教えてくれるので仲良くなって、お互いに日本と中国のお茶文化を紹介しあいました。

現地の紹介
浙江大学は中国浙江省杭州市にあります。浙江省は静岡県と友好提携を結んでおり、私が留学に来た今年は35周年の節目のセレモニーがここ杭州市で行われ、静岡から大規模な訪問団が11月にみえました。気候や土地柄は静岡と似ていると言われ、一年を通して比較的過ごしやすく、冬には雪がほぼ降らないというのがよく紹介文で見ます。実際住んでみると、静岡と比べ夏は長く2,3度高く、冬はその逆であるように感じられました。特に今年は日本でも大寒波が押し寄せたように杭州でも数年ぶりに雪が積もりました。ただ静岡のように北風が強くつんざくような寒さではなく、ただ気温が低い寒さです。
杭州は中国の中では有名な観光都市で、西湖という湖があります。静岡より広く、都会なので一人で買い物へ行ったり、夜10時ころに外にいても危ないと混じることはありませんでした。郊外は辺鄙なところもあるので一人で行くのはよくないですが普段の生活圏なら女性一人で出かけることは問題ないです。食事についても中華料理以外に日本食、韓国料理、西洋料理、ファストフード、カフェなどなんでもあり、生活必需品についても手に入らないものは基本的にないです。
衛生面に関しては日本と比べると汚いですが想像よりはまだましでした。特に道路は清掃員の人が頻繁に掃除をしているのでごみなどはあまりないです。日本人が厳しいと感じるのはおそらくトイレとレストランでしょう。トイレは和式が多く紙はありません。つまり安いので神は流さずゴミ箱に捨てる習慣で綺麗なトイレは学校にも街中にもほとんどないです。部屋のトイレは幸い洋式で、自分で掃除をすれば大丈夫でした。レストランは綺麗な場所が多いですが、ローカルな、地元の方が行くような小さなところだと汚れがひどいところもあります。肉まんなどの食品をダイレクトにビニール袋に入れるのは中国の習慣ですね。大気汚染はよく北京のことが日本では話題になりますが、杭州は比較的綺麗と言われているものの、実のところ汚染はあります。私はその影響を全く受けていませんが、人によっては体調不良になったり、風邪をひいてしまったりするようです。また多くの人が路上喫煙をし、道端に痰を吐くのは今も耐えがたく思っています。衛生面は日本が特別と思うしかないでしょう。

生活の紹介
中国の大学生は基本的に寮生活で、留学生もほとんどが寮で生活します。ただ日本の寮とは違い食事はすべて自分で用意し、各々の部屋にトイレ・シャワーがあるので掃除当番等もないです。ほぼルームシェアと変わりませんが、自炊する場所は部屋にはありません。交換留学生の多くは一人部屋を希望するのでプライベートのある環境で生活できます。一人部屋のある寮は各階に一か所炊事を行える場所があります。2人部屋、3人部屋の寮もありますが交換留学生は1人部屋にしてもらえることが多いようです。部屋にはベッド、勉強机、シャワ―、トイレ、洗面台があり十分に暮らせます。清潔ではない部分多いので神経質な方は厳しいかもしれませんが、自分で掃除をすれば私は問題なかったです。
以前に浙江大学に留学していた方と今回の私の留学での一番の違いはスマホの利用度でしょう。今中国はキャッシュレス社会になり、スマホ一つで支払いができるようになりました。中国で銀行口座を開設しアプリをダウンロードすればすぐに使えるようになります。わたしも原因をもって出かけることはほぼありません。スーパー、コンビニ、レストラン以外にも公共交通機関・美容院・夜市や屋台、レンタル自転車すべてスマホで支払えます。これは中国では偽札が多く、また紙幣は割と汚いので現金に対する信頼があまりないからともいわれています。支払いのほかにも、高速鉄道(新幹線)の切符をアプリで予約できたり、タクシーをアプリで呼べたりもできます。。面白いのが出前とネットショッピングのアプリで、中国人は温かい料理を好むのでデリバリーが発達しており、日本ではピザが一場の多いですがここでは基本的にどんなものも温かい状態で、どんな場所にも届けてもらえます。ネット割引もあるので意外と食べに行っても届けてもらっても値段が変わらないので不思議です。ネットショッピングについては、街中にあるショッピングモールは有名ブランド店が多く安価なものが手に入りにくいので、服や生活必需品はネットで買い物することが多いです。ネットの方が圧倒的に種類も多く値段も安いので便利です。また校内に宅配便受取所がありそこに荷物配達されるので自分の空いている時間に行けて助かります。日本より遥かにネット社会化が進んでいます。
ただ中国のインターネットで困る点は、外国のサイト・アプリが使えないことです。日本で多く使われているLINEやその他のSNS、YouTubeやWikipediaは基本アクセス制限があり見れません。単語を調べたり友人と連絡を取ったりするには本当に不便でした。勉強に集中できるという点ではいい環境になると思います。最近ではスマホで映画を見るのが楽しいです。もちろん字幕も音声も日本語がないので中国語ですが、勉強になります。こういった不便さは徐々に慣れて今は気になりません。

経済面
中国は日本と比べたら物価が安く日本人にとっては暮らしやすいと感じるでしょう。学校の食堂なら一食200円以下でおいしいご飯をお腹いっぱい食べられます。ラーメン、餃子、肉まんやたくさんの種類のおかず、品ぞろえはかなり豊富です。主食が比較的安く、レストランでご飯は一杯50円程度でもらえるのでありがたいです。デパートなどのちょっと高級なところでも2000円は超えなかったと思います。また公共交通機関も安く、市バスは基本30円~40円、高速鉄道(新幹線)は杭州から上海まで約一時間2000円弱です。静岡から東京までひかりの料金と比べるとわかりやすいですね。日用品に関しても基本的に安く、通販で買えばもっと安いです。家賃が光熱費と水道代込みで月25000円程度、食費が毎日外食で3万円~4万円なので日本の大学生の一人暮らしより安いでしょう。

語学面
中国に来てから語学力は確実に伸びました。現在半年の授業を終えたところですが、HSK6級(中国語能力試験の一番難しい級)に合格でき、日常会話もスムーズにできるようになりました。ただ、まだまだ足りてないと感じ部分も多く、作文の授業が今までなかったのでレポートのような難しい文章は書くことができず、知らない言葉も当然たくさんあるので勉強は必要です。
私は静岡大学での専攻が中国言語文化で、中国で自分の専門を学ぶことを今回の留学の目標にしていました。前学期の半年間は語学力の向上のために留学生の授業に参加していましたが、後学期は実際に中国人学生の授業に参加します。今の自分の語学レベル決して十分ではないかもしれませんが、自分に負荷をかけ、挑戦してみたいと思います。また静岡大学にはないような授業もたくさんあり、シラバスを見るだけでもとってもわくわくします。
また旧正月の春休みが1ヶ月ほどあるので中国のいろいろな都市を旅行に行くつもりです。武漢、成都、重慶、香港、広州、長沙のほかに、旧正月は中国人の友達の実家にお邪魔させてもらいどうやって過ごすのか教えてもらうことになっています。たのしみです。中国に来てから上海と南京、寧波に旅行に行きましたが、来たばかりの頃と比べ半年たってからの旅行は聞き取れること、発見も増えているでしょう。

まとめ
私は静岡大学には実家から通っていたため、中国で初めて一人暮らしをしました。来る前は洗濯も掃除も料理も自分ではしたことがなく海外でやっていけるのか不安でしたが、やればなんとかなる、というのが一番の感想です。最初は言葉も通じませんでしたが、たくさん聞いて話しているうちに少しずつ良くなっていきました。意識をちゃんと高く持っていればその分進歩も早いでしょう。ホームシックにはあまりなりませんでしたが、日本に戻ったら何しようかを考えたり、時には勉強する気が起きないこともあったり、毎日完璧ということはありませんが、自分の勉強のために頑張ろうという大まかな気持ちが大事かなと思います。
中国での留学生活は不便だったり制限が多かったりというのを紹介したのでネガティヴな印象を与えてしまったかもしれません。ですが中国での現実がこれであり、浮かれた思いでする留学とはやっぱり違うと思います。きっと中国に留学に来る人は心のどこかに覚悟があると思うのでそれさえあれば大丈夫だと私は伝えたいです。
さて、中国留学を目指している人以外の方に向けて、冒頭に述べたことについて私なりに半年住んでみて感じたことを書きたいと思います。私も日本にいた時、中国言語文化を専攻し普段から中国に接していましたが、それでもやはり中国に対しての偏見は強かったです。これは日本で住んでいる限り誰もが避けられないことだと思いますし、中国に限らず百聞は一見に如かずであり実際に行ってみてギャップに気づくことは当然でしょう。ただ中国についてはネガティヴな印象しかないことが多くここがほかの外国との違いです。
私の中国人の友達はみんな優しく外国人に対する偏見を持たずに接してくれます。積極的に旅行やお家に誘ってくれて、わからないことは丁寧に教えてくれます。他にもバスの中でお年寄りや子供に席を譲るのは当たり前、中国人には「奢る」文化があり初めて一緒にご飯に行くと食事を払ってくれることもしばしばです。日本のアニメが好きな人は日本人以上に多く私の知らない作品のことをよく聞かれます。日本製の製品に対する信頼度も非常に高いです。
しかし、杭州や上海のような沿海部ではなく内陸部に行けば状況も大きく変わります。農民が多く、マナーのない人はもっと多くなったり、外国人に対する意識も寛容的ではないこともしばしばです。半年経った今でもマナーの悪さには慣れませんし、受け入れられません。街は近代化が進んでも人民を変えていくのは難しいということがよくわかります。
国によって重視するものは本当に異なっているものだと留学に来てから感じます。マナーの悪さ、接客態度、日本人には重視する人が多いですが、中国では重視しない人も多いです。だからと言って文化に優劣をつけることはできません。中国にも親切な方もいっぱいいます。もちろん悪い人もいます。それは世界一の人口なので比例して悪い人も多く見えてしまうのでしょう。日本と比べて中国大陸は広いですし、日本よりたくさんの民族がいるので同じアジア圏の国ですが環境が全く違います。中国で暮らすことは単なる語学力向上のため以上に意義があると私は思います。

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