静岡大学国際連携推進機構

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留学プログラム

交換留学

ヴッパタール大学(ドイツ)

  • 留学期間:2016年10月~2017年3月末
  • 学部等:総合科学技術研究科 情報学専攻

1. 留学の目的および活動の成果
 私は現在修士2年ですが、学部4年生の頃に一度ドイツ留学を経験しています。当時も、今回と同様のプログラムを利用し、ヴッパタール大学に2セメスター在籍しました。その際に卒業研究のテーマとして、ドイツの戦争記念碑を扱うことに決めました。その研究にやりがいを感じたため、さらに進学して現在も同様のテーマに取り組んでいます。
 今回の留学では、語学力の向上および研究資料の収集の2つを主な目的として定めていました。長期の交換留学プログラムでは、授業の履修なども含めて基本的な活動の自由が保障されているため、自身の行動計画を自由に立てることができるという強みがあります。
私は、現地で外国人向け語学コースを履修し、それを活動の軸に据えていました。語学コースは、週4~5日、8:15~11:45(あるいは13:30まで)の時間帯で開講されています。そのため、平日は半日を授業で過ごし、残りの半日で出かけたり図書館で勉強したりしていました。
ドイツ語コースには、ドイツ以外の世界各国からやってきた学生たちが集まります。友人・知人のつながりも、この語学コースを通じたコミュニティから広がっていきました。
日本においてドイツ語力を証明する資格には、ドイツ語技能検定試験やDAF(Deutsch als Fremdsprach)があります。しかし、残念ながらドイツの大学ではこれらの試験の結果は大した意味を持ちません。異国の学生がドイツ国内でドイツ語力を証明するためには、DSH(Deutsche Sprachprüfung für den Hochschulzugang)という試験を受ける必要があります。語学コースが最終目標として定めているのが、このDSHに合格することです。そのためには、語学コース内で上位クラスに進級したうえで内部試験に合格しなければならないため、一からドイツ語を始めるという学生にとってはハードルが高いものです。前回留学時には、DSHの受験資格を得る手前の段階で留学期間が終わってしまっていました。しかし、今回は3月の試験を受験することができ、無事合格することができました。語学力に関しては、これをもって一つの目標を達成できたように思います。
 週末や長期休暇の折には、各地の記念碑や博物館を訪れ、資料収集に努めました。記念碑や博物館などの施設はしっかりした売店等を併設していることが多いため、施設の概要を記した資料や周辺分野にまつわる書籍などを容易に手に入れることができます。できることならば、資料を収集したのちにある程度読み解いてまとめておきたかったのですが、半年の留学期間でそこまで進めることはできませんでした。日本では手に入れがたい資料が複数手に入ったことは留学の成果と言えるかもしれませんが、それらを研究に生かすことができるか否かはこれからの一年次第ということになりそうです。

2. 旅行に役立つ交通機関
せっかくドイツに留学するのであれば、あちこちに出かけておかないと非常にもったいないと思います。ドイツ国内にも数多くの文化・雰囲気の差異がありますし、また欧州内であれば各国間の移動は非常に容易です。前回留学時には、鉄道ばかり使っていたのですが、今回は友人たちの助言を得て各種交通機関を試してみました。今後留学される方のお役に立つかと思いますので、いくつか紹介いたします。

2-1. 近・中距離移動
ドイツでは、大学に在籍したうえでセメスター料金というものを支払うことで、セメスターチケットという定期券のようなものを手に入れることができます。これを利用することで、大学が立地している州の内部の鉄道(IC・ICEを除く)・バスが乗り放題になります。そのため、近場であれば非常に気軽に出かけることができます。
 ドイツの鉄道は、DB(Deutsche Bahn)という企業が運営しています。日本でいうところのJRのようなものです。国内移動であれば、基本的にどこへ行くにしてもDBにお世話になることになります。DBの時刻表などは、現在ではスマートフォンのアプリとして無料で配布されているため、積極的に利用しましょう。
 バスについては、地域ごとに交通ネットワークが異なります。例えば、ヴッパタール大学周辺ではVRR(Verkehrsverband Rhein-Ruhr)という交通ネットワークを利用することになります。こちらも、各ネットワークにアプリあるいは専用webサイトがあり、それを利用することで容易に時刻表等の検索が可能です。
 ヴッパタールに留学するのであれば、事前に以下のアプリをダウンロードしておくことをおすすめします。
1. DB Navigator
2. VRR App

2-2. 遠距離移動
 欧州内は国をまたぐ場合でも陸路で簡単に移動することができます。例えば、ヴッパタールから乗り換えなしでオランダまで行くことも可能ですし、ケルンのような大型駅からはフランス行きの特急列車も出ています。ただし、セメスターチケットはいわゆる鈍行列車のみに対して有効であるため、遠距離移動でIC・ICEなどをはじめとした特急を利用する場合は自分でチケットを購入する必要があります。その際、旅行計画を早期に立てて予約をする場合は安価にチケットの購入をすることが可能です。しかし、旅行の前日・当日購入となると、国内移動であってもかなりの高値になってしまいます。
 もし鉄道による自由な旅行をするということであれば、ジャーマンレイルパスなどの、外国人向け旅行チケットの購入をお勧めします。これは、日本でいうところの「青春18きっぷ」に近いもので、チケットに利用日を書き込むことでその日一日各種鉄道が利用し放題になります。新幹線を利用できない日本の場合と異なり、IC・ICEも乗り放題となるため、鉄道のみで遠距離移動を試みる場合は、ほぼ確実に元を取ることができます。
 とはいえ、常に早期の計画を立てられるわけでもないでしょう。そういった場合は、バスを利用した方がお得です。欧州各国間を結ぶ長距離バス会社としては「Flixbus」が有名です。バスである以上、当然ながら目的地到達までには鉄道と比較して時間がかかってしまいます。しかし、値段は特急を利用した場合の半額以下であり、経済的には確実にこちらの方が学生向けといえるでしょう。また、Flixbusは深夜便も運航しているため、車内泊が苦にならないという方であれば多少無茶な日程でも旅行をすることが可能です。また、深夜の移動であれば日中の行動時間を節約することもできます。Flixbusもwebサイトの他にスマートフォンアプリが用意されており、それを介してクレジットカードで乗車券を購入することができます。スマートフォンを利用した場合、チケットのQRコードを画面に表示して乗り場に持って行くだけで乗車処理をしてもらうことができます。そのため、鉄道と比較して手軽な移動手段といえるかもしれません。
 移動時間を極力節約したいという場合は、空路を利用することになるでしょう。欧州内には、「Ryanair」や「Eurowings」などの格安航空会社が多数存在しています。場合によってはバスよりも安価に利用できることさえあります。空路は陸路より高額だというイメージにとらわれず、目的地を定めたら料金比較をしてみると良いでしょう。
 ということで、長距離移動手段の情報収集には以下のアプリあるいはwebサイトを利用してみてください。
1. DB Navigator
2. FlixBus
3. Ryanair
4. Eurowings

3. ドイツに留学することで得られるもの
 留学するならば、基本的には自身が興味のある国を選ぶはずです。しかし、留学中に興味のある分野だけを学ぶというのはもったいないことでもあります。半年から一年間現地で生活していれば、それまで出会ったことのない文化や人、ものとの出会いがあちこちにあります。
 私は、項目1で述べたように、研究対象としてドイツに興味がありました。ところが、今回の留学中で仲良くなった友人の大半がドイツ以外の国出身の学生たちでした。また、町を歩いていてもドイツ人を探す方が困難というほどにヴッパタールの位置する西ドイツは多国籍です。バスや電車に乗っていても、常に数か国語が耳に入ってきます。私は、この多国籍さがドイツ留学の一つの強みであると考えています。
 ドイツはEU内で経済的にも政治的にも大きな影響力を持っており、そのためかドイツには世界各国からの学生が集まってきています。EU内にはERASMUSプログラムという交換留学協定のようなものがあるため、各国間の学生交流が盛んです。しかし、他のEU諸国の学生の話を聞いてみても、ドイツの大学は比較的多国籍化が進んでいるように見受けられるとのことでした。
 交換留学生の大半が、外国人向けドイツ語コースを履修することになるかと思います。すると、必然的にドイツ人以外の学生たちとの交流機会が増えます。ここには二つのメリットがあると私は考えています。
第一に、語学学習の面で恩恵を受けることができます。ドイツ語を勉強するならば、ドイツ人と話すべきだと思われる方も多いでしょう。しかし、いきなりネイティブスピーカーと会話をするのは困難です。「ドイツ人は早口だ」とよく言われているのですが、これはおおむね間違っていません。明らかに外国人である相手に対しても、わざわざゆっくり話してくれるということは私の経験上ほとんどありませんでした。外国人として差別されていないという捉え方をすればありがたいことなのでしょうが、当初は非常に困惑しました。同程度の語学力を持った学生たちと試しながらドイツ語を利用していくことで、切磋琢磨することができるように思います。そして、それを続けているうちに早口なドイツ人の言葉もいつの間にか理解できるようになっていきます。
二つ目のメリットは、容易に世界各国の文化や政治情勢などに触れることができるということです。私が受講した語学コースには、日本・中国・フランス・スペイン・チュニジア・エチオピア・モロッコ・トルコ・シリアなど、非常に多国籍な学生たちが集まっていました。彼らとドイツ語であれこれ会話していく中で、自然と各国の文化や事情についての情報に触れる機会が増えていきます。
例えば、トルコの学生たちからは現在のエルドアン大統領のやり方に対する辛辣な批判や、一方で支援する声など、生の意見を聞くことができました。日本にいる限りはニュースの中の出来事でしかなかったことに対し、実際に現地の学生たちから話を聞くことで、実感が増したり、問題意識が高まったりします。
シリアからの学生は、難民として海を渡ってきたのだと話してくれました。私の中では、難民というと一時的に国を捨てざるを得なくなった気の毒な人たちというイメージがありました。しかし、彼は「現在のような混迷の時代の後には国を立て直す人材が絶対に必要になる。だから、僕は政治学や法学をドイツで学ぶのだ。いつか戦争が終わったら国に帰って国家再建のために働きたい。」と非常に前向きな姿勢で語っていました。それを聞いて私の中のステレオタイプが崩されたように感じました。
また、学生たちの国籍だけでなく年齢層が多様であることも日本との大きな違いです。10代から30代まで、様々な年齢層の学生たちと一緒に学ぶことになります。日本では大半が横並びとなりがちで、年が3~5歳離れた学生と同じ授業を受けるということは中々ないのではないでしょうか。特に、年上の学生が多いことは非常に大きなメリットです。というのも、彼らは様々な人生経験を有しているからです。自分の将来に悩んでいた際に相談してみたところ、含蓄に満ちたアドバイスをしてもらうことができました。メンターになってくれる相手を見つけることができれば、長期の留学期間でより多くのことを学ぶことができるでしょう。また、彼らの知識や経験に触れることで、自分の考え方の幅も広がったように思います。
こうしたことは一例に過ぎないのですが、とにかく色々な人たちと話をする機会を大切にしていくことで、日本にいては感じづらい事・見えづらい事に触れることができました。彼らから学んだことや、彼らに考えさせられたことは、そのほとんどが私の研究テーマの外側にあることでした。しかし、だからといって価値がないものと切り捨ててしまうのはもったいないことだと思います。むしろ、こうした出会いや体験談などから得ることができた経験や考え方こそが、留学経験者としての宝なのではないかと思います。
 もちろん、ドイツ語コース以外にも様々な発見や出会いの場があります。例えば、各地へ旅行することで見つけられることもありますし、また近場のお店などに通っていることで気が付くことなどもあるでしょう。マルチカルチャーなドイツ(特に西部)だからこそ発見できる人生観・価値観というものは絶対にあります。ぜひこれからドイツへ留学される方は、「ドイツ的なもの」以外にも目を配り、心を向けてみてください。留学するまでに期待していた以上のことを学ぶことができるはずです。

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