静岡大学国際連携推進機構

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留学プログラム

交換留学

ブラウンシュバイク工科大学(ドイツ)

  • 留学期間:2019/10~2020/03
  • 学部等:総合科学技術研究科(工学専攻)

【留学の成果】
 私の留学は新型コロナウイルスの影響で6か月早く終わってしまうことになりました。正直なところ、とても残念で悔しいです。帰国して数か月経つ今でも、もしコロナウイルスがなければと考えてしまうこともあります。それでもドイツで過ごした6か月はたくさんのことを経験し学ぶことができた密度の濃い時間であったことには変わりありません。このような状況になったからこそ考えたこと、感じたこともありました。少なくともこの6か月間が私のこれからの人生に大きな影響を与えるものであることは間違いないと感じています。その中でも特に留学前後で大きく変わったなと思う点を以下に紹介します。
 まず一つ目に、英語力の向上です。私はブラウンシュバイク工科大学の宇宙航空工学科の修士課程の学生として交換留学をしました。ドイツでは修士課程の学生も比較的多くの授業を履修し、単位を得ないといけないようです。なので修士課程の学生が履修できる授業はたくさんありますし、英語で開講されている授業は学士過程のものよりも圧倒的に多いです。私はドイツ語がほとんど話せない状態で留学を始めたため、英語で開講される授業を取っていました。そのうちの一つの授業で毎週宿題が出されました。宿題は教科書を読んで、その内容で分からないことや疑問に感じたことを3つ取り上げてそれぞれに自分なりの答えを出すというものでした。学生が準備してきた疑問は授業中に取り上げられ、教授と学生みんなで議論してこのクラスとしての答えを出します。このような学生参加型で進められる授業では、教授の講義を一方的に聞くものに比べてより高い英語力が求められました。授業中に発言することも簡単ではないですが、何よりも大変だったのが宿題の「教科書を読む」ということでした。一週間で読む量は20ページ前後です。初めのうちは教科書を読んで理解するだけでも途方もない時間がかかりました。一日のうち授業は1コマか多くても2コマだけしかとっていませんでしたが、授業以外の時間のほとんどをその宿題に充てていました。ですが、毎週毎週その宿題をこなして3か月ほどたった頃から少しずつではありましたが、教科書を読むスピードと理解するスピードが速くなっているということに気付きました。工学系の技術に関する文章では専門的な単語が多く出てくる反面、その単語が何度も出てくることがよくあります。初めのうちはすぐに知らない単語に出会って、いちいち検索する必要がありますが、一度覚えてしまうとどんどん読み進められるということが少なくないような気がします。このように、英語を読む能力は一週間という限られた時間の中で英語の文章を一定量読み続けるということによって成長しました。正直なところ、この方法は留学をしなくても日本国内でできることです。ですが、数か月もの間高いモチベーションを保ってこれに取り組むことができたのは留学をしているという環境があったからこそできたことではないかと思います。
 英語を話すという能力も向上させることはできましたが、まだまだ満足できるレベルではないと感じています。会話では、教科書のようにいつもいつも同じような分野のことを話すことはありませんし、知らない単語を検索している時間は会話中にはありません。挨拶やよく使うフレーズはすぐに自分でも使えるようになりますが、知らない単語が出てきたり相手の意図を理解できないことは最後までよくあることでした。これはよく言われることですが、留学に行ったからといって自動的に英語力が向上するわけではありません。授業さえ出ていれば、他の時間をどう使うかは自分次第です。極端に言えば、一人で食事し休みの日は部屋にこもって動画を見たりしていればドイツ語や英語をほぼ使うことなく過ごすことができます。このような生活を続けていてはいくら海外に住んでいるからと言って語学力が向上するはずがありません。語学力を向上させるためにはそれを使わなければ“ならない”環境に自分を置くなどしなければなりません。私もそれを理解したうえで留学をスタートさせたつもりではいましたが、そんなに簡単なことではありませんでした。初めのうちは留学生同士の集まりなどに積極的に参加して英語を話す環境づくりに努めました。ですが、思うように英語が話せず留学前にイメージしていた理想とのギャップに戸惑い、ストレスを感じることもありました。こういったことが何度もあると、一人でいる方が楽なので無意識に人と会うのを避けてしまうようになりました。このときに、バランスの重要性に気付きました。もちろん、英語を話す機会をたくさん作るということは英語力向上にとっては重要なことに変わりはありません。ですが、母国語である日本語に全く触れないというのは日々の生活における精神的な負担を大きくしていました。英語で会話するには日本語でする何倍も頭を使います。このことに気付いた私は、たまにテレビ電話などでリラックスして日本語を話す時間をつくりました。このことで心の余裕を取り戻せたような気がしています。これ以降、私はバランスを取りながら英語を話す機会を継続的に作り続けるようにしていました。人によってベストな方法は変わると思いますが、長期間の留学をされる方の参考になればと思います。
 二つ目に、様々なバックグラウンドを持った学生に出会い、交流することができたことです。ドイツは工業的にも経済的にも世界をリードする国々のひとつであり、学費が安く抑えられることなどから世界中から留学生が集まってきます。ブラウンシュバイクは大きな街ではありませんが、ブラウンシュヴァイク工科大学にはアメリカやフランス、イタリア、スペインなどの西洋諸国、中国、韓国、台湾、インド、イランなどのアジアの国々、エジプト、モロッコ、チュニジアなどのアフリカの国々からといった世界各国の留学生がいました。これらの留学生と交流し、文化の違いなどを知ることはとても刺激的で面白かったです。とくに、東アジアの国々の人たちと話すと知っているようで何も知らなかったのだということに気付かされました。受験の仕組みや大学の学期の時期、食文化の違いや共通点など毎日、何かしらの発見があるというくらい気づきがありました。こういった交流を通じて、これまで漠然としかもっていなかった中国人や韓国人、台湾人といった「外国人」のイメージがどんどん変化していきました。
 留学に行く前までは「○○人」と聞くと、テレビや映画などで得た情報のみで勝手にイメージを作っていました。イメージで出来上がった○○人は実在する人ではないので、顔も名前もありません。なんだか、自分からは遠い存在なんだという風に感じていました。ですが、留学を通して様々な国から来た留学生や現地の人と出会ったことで「○○人」というイメージにどんどん具体的な情報が足されていきました。これまでのイメージが壊されたことも少なくありませんでした。留学が終了した今、「○○人」と聞いてイメージするのは顔と名前を持った「友人」達です。このことは私にとって大きな変化でした。日本のテレビなどで取り上げられている外国のニュースをみると、その国の人々全体のイメージとして捉えがちです。しかし、一人一人の顔を思い浮かべることができれば日本と同じようにざまざまな考え方、性格の人がいるんだということを思い出させてくれます。国同士の関係が悪くても、お互いの国民全員が嫌い合っているわけではありません。なので、そういったときこそ国民同士が交流しお互いの理解を深めていくことが重要なのだと思います。このことに気付けたことで、グローバル社会を生きていくための一歩を踏み出せたような気がします。
 最後に、私の留学の最大の成果は楽しくて豊かな時間を過ごすことができたということだと思います。海外で暮らすということは、良い意味でも悪い意味でも海外旅行では体験できないような体験ができます。例えば、住むことで現地の人々の生活を肌で感じることができます。しかし、そのためには住民登録や居住許可証を発行したりといった手続きをしなければいけません。日本では簡単にできることでも国が違えばどこでそれができるのかというところから分かりません。普通に生活を楽しむためにはこのような困難を乗り越える必要があるのです。分からないことだらけの外国で困難を乗り越えるためには誰かの手助けが必要な場合が多いです。このような時には、自分から助けを求めなければいけません。こういった過程の中で友人ができたり、現地の人の温かさに支えられたりという体験が生まれます。私もこの留学の中で現地の学生に助けられたり、同じ立場の留学生たちと助け合いました。これから留学される方には恐れることなく助けを求めて海外での生活を楽しんで頂きたいです。

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